あまつぶひとしずく
肘近くまでまくりあげた白いシャツにあたしたちのスカートと同じチェックのスラックス。
その裾は雑な歩き方のせいですっかり濡れ、濃い青に変わっている。
耳まですっかり出た短い髪はすっきりと爽やか。
あたしと同じ帰宅部とは思えないほど運動部のような見た目で、球技とか似合いそう。
まぁ事実、こいつは運動は昔から得意なんだけど。
康太はばかだけど、まっすぐないいやつ。
ばかだけど。
「もう、康太くん、ちーちゃんにそんなこと言わないで」
「うっ……」
さっきまであたしに余計なことをしてきた男とは思えない。
顔を赤く染めて、お前は乙女か。
ちなみに、ちーちゃんとは静音がつけたあたしの愛称。
いつもそう呼んでにっこり笑ってくれる彼女は、パステルグリーンの優しい色合いの傘からおっとりと顔をのぞかせた。
白のブラウスとリボンはあたしと同じだけど、スカートの丈は膝まであり、おしとやかな印象を受ける。
前髪をふんわりとこめかみで留めていて、肩にかからない程度の髪はもちろんあたしとは違い1度も染めたことがない綺麗な黒。
少したれた目元が優しげで、華奢な静音はまるで小動物のようだ。