あまつぶひとしずく
はらはら
教室の内から濡れた窓を見やる。
はらはらと音もなく雨が散っている。
目で捉えるのも難しいほど、細かい雨だ。
「ちーちゃん、どうかしたの?」
ぼんやりとしていたあたしの視界にひょこっと静音が顔を出す。
眉を下げたその表情にくすりと笑みを浮かべて、首を振った。
今は昼休み。
早いことにふたりが付き合いはじめてから1週間が過ぎた。
ちょうどその頃から雨がよく降るようになり、世間はもうすっかり梅雨。
毎日のように世界は濡れたままでいる。
「腹でも痛いのか?」
「違う」
「そっかー、腹くだしたのかー」
「だから違うっつってんでしょうが」
人の話を聞きやしない!
苛立ちを隠すことなく、あたしは康太のお弁当のたまご焼きに箸を突き刺した。
文句を言われる前にぱくりと口の中に放りこむ。
「あ!」
「余計なことばっか言ってるから悪いのよ」
ふふん、と笑ってしっかり自分のお弁当を護る。
奪われてたまるもんか!