Fiore Zattera
俺はその人を知っていた。同じ高校に通っていた悪名高い先輩だったから。
「よろしく、菱沼です」
「よろしくお願いします」
頭を下げた。
この人に対する俺の第一印象はひとつだけ。
絶対に怒らせないようにしよう。
「あ、お疲れ」
自転車を引いていると、ちょうど裏口から菱沼先輩が出てきた。
「お疲れさまです」
「家どっち?」
「コンビニの方っす」
あ、ちゃんと敬語遣った方が良いのか。と思ったけれど、気にしない様子だった。
「一緒だ」
ということで、一緒に帰ることになった。