Fiore Zattera

一人になった壱花をふと見る。

長い睫毛を伏せていた。

「壱花、何か食べたいものある?」

「んーん、大丈夫」

あたしの方を見て静かに笑う。ここ数日一緒にいるけれど、何かを食べているところを見ていない。

「何か食べないと、身体壊すよ……」

「ちょこちょこつまんでるよ。ごめんね、連日付き合わせて」

「そんなことない」

どうして壱花が謝るの。

「ねえ、菱沼呼ばないの?」

高校の三者面談で、菱沼と壱花のお母さんが話していたのを見たことがあった。

菱沼だって、きっと壱花に会いたいはずだ。



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