Fiore Zattera
壱花が顔を上げた。頷くのかと思えば、首を横に振る。
「いいよ、仕事あるだろうし」
「きっと呼べば来るよ。壱花のお母さんだよ?」
「断られたらやだから、いい」
泣きそうな顔をして膝に顔を埋めてしまう。
こんな壱花を見たらきっと菱沼はすっ飛んでくるはずなのに。
壱花はどうして、こんなに自信がないんだろう。
容姿、頭の良さ、中身と劣っているところなんてないのに。
「そっか。じゃあなんか甘いもの買ってくるね」
「……ん、ありがと」
どうして、菱沼が好きって気付かないんだろう。
ビスコッティ End.