Fiore Zattera
アフォガード
その日、菱沼壱花はとても機嫌が悪かった。
「片頭痛?」
「……かも」
友人の真壁が尋ねた言葉に、顔を机に突っ伏しながら答える壱花。
「片頭痛って市販の薬効かないんだっけ」
「そなの?」
「らしーよ。今日は帰った方が良いんじゃん? 陣野が送ってくれるよ」
「彼女との逢瀬に水を差すことはしないよ」
力なく笑う声。それでも姿勢が動くことはなかった。
次の瞬間。
窓際にいた生徒たちが窓から校門を見下ろし始めた。真壁も首を伸ばして「なあに?」と興味を見せる。