Fiore Zattera
さっきは掃除していた管理人さんが、管理人室で新聞を読んでいた。
「恋人ですか?」
「友達です。駐車場って空きありますか? 一週間だけ借りたいんですけど」
「西側の三つは空いてるから使ってどうぞ」
ありがとうございます、と返してマンションを出た。幸が停めた車の前で足を止める。
「知らなかった」
運転席はこっちじゃない。
幸は助手席の扉の方に立ったあたしの前に立つ。
「大丈夫でしょ。ちょっとの時間だけだったし、ここに駐めても」
「それじゃない。壱花のお袋さんが」
「あれ、言ってなかったっけ?」