Fiore Zattera

鞄から絆創膏を出して、傷口に貼り付ける。

突然両手首を掴まれて顔が近づいた。膝の上から小説が落ちる音がする。

重なった唇は熱かった。

「……え」

「絆創膏のお礼」

ぼろ、と右目から雫が落ちた。
ぎょ、と彼の表情が固まる。

鞄を持ってその場を立った。校舎まで駆ける。
初めて人とキスをした。




「最近ぼーっとしてない?」

友達の晴恵が下敷きで私へ煽いでくれる。生暖かいけれど、その心遣いが嬉しい。

「暑いからだろ、夏じゃん」

隣の席から椅子を持ってきて真壁は机の中から団扇を取り出す。


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