Fiore Zattera

晴恵がひとつをとって、これどう? と身体にあててみる。

「可愛い、Tシャツが」

「琴の嘘のない言葉結構好き」

「ありがとう」

「えーかわいいじゃん」

急に裏声が入って来る。何か、と振り向くと市外の高校の制服を纏った男子が二人並んでいた。
晴恵はぱっとTシャツを置いて、私の腕を掴んだ。「いこ」と小さく言う。

「もうちょっとみてこーよ」

「そーだよ、ほら試着とか。着替えさせてあげよっか?」

田舎育ちというのはこういうとき有利で、こういう絡まれ方には慣れている。

「晴恵、琴、やっぱりボードは兄ちゃんに借りることにする」

真壁がのんびりやってきた。


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