Fiore Zattera
いつかは見つかる、と思っていたけれど、早すぎる。
体育館の非常階段下に来始めたのは昨日なのに、もう知られるなんて。
顔を見ると懐かしく感じた。見ないうちに傷が治って、新しい傷が出来ていた。
当然のように隣に座って私の顔を眺める。
「これ」
持っていたものを差し出す。見ると、私があの日置いてけぼりにした小説だった。
ずっと買おうか迷っていたので、返ってきたのは素直に嬉しい。
「どうもありがとう」
「あと、すんませんでした」
「あーうん、それは良いよ、もう。初めてだからって泣くこともなかったよね、あれは自分に引いた」