Fiore Zattera
掌はこちらに向けられたままだった。
「なにそれ」
「私、君と居られて楽しかったよ」
結局、それを実感する。
私の勝手な思い込みだって。
「でも君は違ったんだ」
腫れた目を見て、晴恵がハンカチを濡らして目元にあててくれた。
一緒に真壁も保健室についてくる。
「ここ天国」
付き添いという名目で涼みたかっただけだろうけど。
うちの学校は保健室には先生が駐在しているので、ここは一般生徒にとっては聖域だ。
「ハンカチありがと」
「何かあった? 始業ぎりで教室入ってくるしさあ」