Fiore Zattera

けらけらと真壁が笑う。

保健室の扉が開く音がした。「どうした?」と先生が聞く声と足音。

「ちょっと人捜してまして……」

カーテンを開けたままだった私たちの方を見た男子生徒と目が合った。

「あ、いた」

……私?

「岬」と真壁が言ったのを聞いて、晴恵が「知り合い?」と尋ねる。

「バイトの後輩。誰が捜してんの?」

「あー……っと、今ちょっと急いでて」

「この前クビになりそうだったの、防いでやったの誰だったっけな」

「菱沼です」

さっと口を割る。私は少しだけ真壁の背中に隠れた。


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