Fiore Zattera
晴恵がそれに気付いてか、私の手を握る。
「なんで?」
真壁の後輩が答えるより前にまた保健室の扉が開く音がした。
「今日は訪問者多いなあ」
先生のぼやきが聞こえる。そこに現れたのは、菱沼だった。
今朝見たよりも制服のワイシャツが汚くなっている。
また喧嘩しに行ったのだろうか。
「話、あんだけど」
冷たい目で、菱沼に見下ろされるのは初めてだった。
晴恵が泣きそうな顔になるまで「あたしも行くから」と言ってくれたのを止めて真壁が引き摺って行った。
今回は足で逃げられる相手ではない。
一発くらい殴られる覚悟をしないと。