Fiore Zattera

晴恵がそれに気付いてか、私の手を握る。

「なんで?」

真壁の後輩が答えるより前にまた保健室の扉が開く音がした。

「今日は訪問者多いなあ」

先生のぼやきが聞こえる。そこに現れたのは、菱沼だった。
今朝見たよりも制服のワイシャツが汚くなっている。

また喧嘩しに行ったのだろうか。

「話、あんだけど」

冷たい目で、菱沼に見下ろされるのは初めてだった。




晴恵が泣きそうな顔になるまで「あたしも行くから」と言ってくれたのを止めて真壁が引き摺って行った。

今回は足で逃げられる相手ではない。

一発くらい殴られる覚悟をしないと。


< 128 / 135 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop