Fiore Zattera

そういう問題じゃないでしょう。

ざっと、膝を折り始める菱沼を止めた。

「やめてよ」

「じゃあ」

「わかった、わかったから、付き合う」

溜息を吐いた。さっと立った菱沼が、容赦なく抱き着いてきた。
自分の骨が軋む音がして、軽く目眩を覚える。

「そうだ、花持ってきた」

「……持ってきた?」

校舎の角まで歩くと小さな段ボールが見えた。中から生き物の鳴き声がして、私はそれを覗く。

「どっかの馬鹿が巣箱の上にこの段ボール置いたみたいで、さっき下した」

中には目が開いたばかりの子猫と、桜の花びらが沢山入っていた。


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