Fiore Zattera
面倒なクビを抱えたね、ともう一人の同期男に言われた。
「最近早いね」
苺のヘタを取り始めたグレ男は、こちらを見て目をパチクリさせる。
「いつもはギリギリに来てたのに」
まな板を出して、ヘタの無い苺を薄く切って行く。
「それも原因で副料理長のお怒りを食らったしね」
「菱沼ー、聞こえてるぞ」
「口が滑りましたー」
冷蔵庫に材料を取りに来ていた副料理長が扉越しにこっちを見ていた。今度はドルチェ班が恨みを買う番か。
「悪くないなって思っただけっす」
「早く、良かったに変わってよ」
「どうっすかね」