Fiore Zattera
更衣室を出て、裏口から出るとグレ男が自転車の鍵を外していた。
「おつかれ」
「お疲れっす」
マフラーを巻いて、冷たい外気を吸う。来週には雪が降るとか降らないとか。
「ずっと思ってたんだけど、バイクじゃないんだ」
「どーゆー意味っすか」
「改造バイク乗りこなしてそう」
「先輩こそ、メルセデスのお迎えが来ても良さそうですけどね」
今度こそ無言で肩パンをした。
くっ、と肩を抱いて痛がる後輩を置いて歩き出す。
「……有名だったじゃないすか、族長のお気に入りって」
「もしかしてあたしと同じ高校だった?」
「はい」
グレ男が入って二ヶ月。今更のようにそれを知った。