Fiore Zattera
木原家を出て歩く。外は真っ暗になっていて、どこからか鰹出汁の香りがする。
「来て楽しかった?」
女同士、しかも長年一緒にいる人間同士の会話の中、幸を度々置いてけぼりにした。
「楽しかった。壱花が子供好きなのも分かったし」
肩を震わせて笑う幸。何か面白い要素はあったかね。
「……幸は子供好きそう」
「どうして?」
「なんとなく。面倒見が良さそう、放課後あたしと一緒に暇潰ししてくれてたし」
ふと高校時代のことを思い出して口にしてみた。
「でも、幸も彼女待ってたからか」