Fiore Zattera
幸は背中に夕日を受けながら、きょとんとした顔を見せる。
「……幸と結婚できる女は幸せだろうねえ」
「それは名前と幸せを掛けてんの?」
「ちげーよ」
幸と壱花。
あたしたちが名前呼びしているのは異質に思われるらしい。
馬鹿と優等生が話していることにまず珍しがられる。
『菱沼だよな、同じ苗字の』
タイプが違ったけれど、幸は億せずあたしに話しかけてきた。
同じ苗字だから、名前で呼び合うことにした。幸と壱花。『ツイみたいだな』と幸が笑った意味は、未だ分からない。
「壱花は恋人作らないの?」