Fiore Zattera
新生活。そっか、冬はもう終わりに近づいている。
リモコンを幸の方に放り、立ち上がった。
「どっか行くのか?」
「買い物、近くのスーパー」
「一緒に行く」
「さっき、銀行行ったら口座に給料以外にお金が振り込まれてた」
マフラーを巻いて振り向く。
幸が目を逸らしたので、犯人はすぐにわかった。
「金の切れ目は縁の切れ目」
母親はよく働く人だった。
それを見て、あたしも高校に入ったらバイトをしていた。
あたしには父親との思い出は殆どない。
思い出をたくさん作る前に死んでしまったから。