Fiore Zattera
口付けが落とされる。高校生のあたしは、幸とこうなることを想像出来やしなかった。
「じゃなくて、あたし、初めてで」
言った瞬間、かあっと頬が熱くなった。電気を消してもらっていて良かった。絶対、顔紅い。
さらさらと髪の毛を梳かれる。
「本当?」
目を見られなくて扉の方に視線が泳ぐ。頷いて答えれば、顎を掴まれて幸と目を合わせられた。
幸にしては強引な仕草に目を見開くと、罰が悪そうな顔。
「壱花、いつもこっち見てなかったから。ごめん」
「見て……」
なかったか、と言われれば、なかった。
あたしはいつも窓の外を見ていた。