Fiore Zattera
ドルチェ
深夜にホテルから出て自分の部屋に帰った。
いつも眠っている敷布団を乗り越えた幸は、一緒にベッドで狭い思いをしながら眠る。
「誰かさんが布団に侵入してきて、昨日全然眠れなかった」
「え」
「急に布団剥ぎ取られるから何事かと思った」
くすくすと肩を震わせる。その振動が届いて心地良いけれど、話題は良くない。
「ごめん」
「冷たい手足をくっつけられるの辛かった」
「だから、」
「同じ布団にいるのに手出せないのも」
あたしの手足は今温かい。ぴったりと幸の足に絡んでいる。
……あたし、よく同じ家で無事に過ごせたな。