Fiore Zattera

大丈夫、と手を上げる。もう少し体力が回復したら店を出よう。

「自転車乗っていきます?」

「絶対スリップしそうだからやだ」

「縁起でもないこと言わないでくださいよ」

くるくると鍵を回す音。
グレ男が近くのボロパイプ椅子に座る。「お疲れ」と他の従業員に声をかけられて、挨拶を返している。

それを見て、ふふ、と声を出して笑う。

「あのグレ男が挨拶されて返してる」

「面白いことっすか?」

「馴染んでくれて、教育係は嬉しい」

膝を抱いた腕から顔を上げると、対面に座っていたグレ男が肩を竦めた。



< 78 / 135 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop