Fiore Zattera
眉を顰めてそちらを見ているので、誰かいるのかとあたしも向いた。
「あれ、先輩の彼氏ですか?」
指差す方向。あたしも顔を引き攣ってしまった。
「……うん」
「……送迎付きなんて羨ましいっす」
「本当にそう思ってる?」
「早く行った方が良いと思います」
ちょいちょいと指が動く。あたしは「じゃあね」と掌を見せてグレ男と別れた。
車と共に立っている幸に近付く。雪が積もっているというのに、どいつもこいつも命知らずかよ。
「どうぞ」
助手席の扉を開けて幸が言った。