Fiore Zattera
それに乗り込んで、幸が乗って運転する。ゆっくり進む車と何も言わない幸から、不穏のオーラが出ている気がした。
「怒ってる?」
「そりゃ、朝起きて隣に居なかったらな」
「……すみません」
謝ると笑われた。さっきグレ男に話を聞いた後だから余計に申し訳ない。
「怒って迎えに来たわけじゃなくて、会いたいと思って迎えに来ただけだから」
その台詞に胸がきゅんとする。あたしは乙女か。
マンションに着いて車から降りる。
隣に幸が来て、手を掴んでくる。掴んでいるわけじゃなくて、握っている。
「会社お疲れ様」