Fiore Zattera
エピローグ
「壱花」
教室を出て行こうとする背中を呼び止める。
いつも窓の外を見ている視線がこちらに向く。
「じゃあ、もし余裕が出来たら結婚してよ」
我ながら強引な話だと思った。
壱花は少し考える顔をして、返答する。
「じゃあ25までに貰い手がなかったら」
え、と俺が声を漏らすのを聞かずに教室を出て行く。
……絶対本気にしてないな、あれ。
卒業式が終わった後、昇降口で靴を履き替えた。
「菱沼」
振り向くと、壱花と同じクラスでよく一緒にいる女子。
壱花が一緒にいるときは話をするけれど、直接話したことはない。