Fiore Zattera
届かない存在。
「尊いって思ってたら、きっと誰も近づけないままだ」
花菱と幸菱。対だと知った瞬間、運命だと勝手にこじつけた。
「頭の良い奴ってたまに難しいこと言うから嫌だ」
「いや、壱花のこと、一人にはしたくないって話」
俺も昇降口を出る。
「壱花に変な虫がつかないように見とくから、ちゃんと向き合えよ!」
ばしっと背中を叩かれた。真壁が隣を通り抜けて、校門の方へ歩いていく。
「壱花、最後の制服写真撮ろ!」
「え、新菜はナース服があるでしょう」
「そんなこと言ったら壱花だってエプロンあるじゃん?」
そんな会話が聞こえる。
地元の悪い連中が集まるその集団の横を抜けるとき、壱花と目が合った。
「じゃあな」と小さく声を出した。
小さく手を振るのが見えた。
Fiore Zattera
End.