ボットウーマン！

アパートのポーチに着くとまだ男は壁にもたれて立っていた。走って通り過ぎようとしたが、思いとどまって
「…あの…傘、お貸ししましょうか？」
男は驚いたように見上げる。顔は暗くてよく分からない。
「あ…すみません。なんか、行く場所なくて…えっと…気にしないでって言うのもなんですが…」
「…家出とかですか？…」
「…違います…あの、昼間の火事で、家に入れなくなっちゃって…俺、ジョギングに行ってて、財布もカードもケータイも全部家で…引っ越してきたばかりで、公民館の場所とか分からなくて、ご存知ですか？」
「公民館なら分かりますけど、もう閉まってるんじゃないかなぁ。」
声の感じから自分より若い人だ。