あのすずの音が忘れられない

すずがうちに来てから、すずは僕の車をよく使うようになった。

もともとアウトドアなタイプなので一人で出かけることにも抵抗なく、休みの日なんかいつの間にかどっかに行っている。

「ジュンジさん、今日車借りてもいい?」
「いいよ、じゃあ仕事場まで送ってくれる?」
「わかった。」
「終わったら迎えに来てね。」
「うん。」

いつもどこに行っているんだろう。
あんまりしつこく聞いてもあれかな。
僕はインドア派なので、休みの日はもっぱら家でダラダラしている。それが物足りないのかもなぁ。

「じゃあ、僕は仕事の準備してくるよ。」
「わかった。」

僕はいつも仕事前にお風呂に入って、髭を剃り、髪をセットする。

ここで僕のコンプレックスのご紹介なのだが、僕はヒゲが濃ゆい。というか、体毛が濃い方で、肌の色は白くかなり目立つからかなり気にしている。

だから、準備にはかなり時間がかかるため、家を出る3時間前には起きて準備に取り掛かる。

「ジュンジさん、ジュンジさん」
「どうした?」

シェービングクリームを塗りたくったまま鏡ごしにすずを見る。

「何しているの」

見ての通りですが。

「髭剃りだよ。」

すずはつまらさそうに「ふーん」と言いながら洗面所の入り口から離れない。

「すず、どうしたの」
「いや、つまんないからちょっと」

ちょっと、なんだよ!
ちょっ、正直気が散るから邪魔だなぁ。

「すず、ごめんだけどちょっとあっち行ってて」
「何で?」
キョトンとした顔で首を傾げている
何でって、何でだろう。
あ、気が散るからか。

「気が散るから」
「何で気が散るといけないの?」
「失敗するからだよ」
「そんなに難しいの?」
「難しい…かな?」

するとすずは押し黙ったままその場から動かなくなった。
しまった失敗か?どこで機嫌が悪くなったんだ!わからねー!

「すず?どうしたの?」
「ジュンジさんは髭剃りすごく時間かかっているよね」
「ま、まぁね」

ちょっとでもバランスが悪くなったら全体的に見た時の仕上がりが悪いからな。

「どうしてそんなに時間がかかるのか気になって。」
「そ、それは…」

ヒゲがコンプレックスな訳で。ってどうしてそんなに気になるんだ!そんなに長いのか?
(長いみたい)

「それは、この子達(髭)がいい子じゃないから…」
「そっか、ごめんね邪魔して。儀式頑張って」

飽きたのか?すんなり行ってしまった。
ていうか、なんだよ儀式って!
これ以降、僕の髭剃り儀式の時間は一時間ほど短縮することに成功した。
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