あのすずの音が忘れられない

すずはいきなり家に連れてきた(ていうか押しかけた)割にはあっさりと僕の家族に溶け込んでしまった。
家の家族の適応能力と、すずのそれには脱帽するばかりだ。

僕がおかしいのか?

特に母と仲のいいすず。
よくスーパーや、TSUTAYAなどのちょっとした買い物にススっとついていくものだから母はすっかり気に入ってしまったようだ。

「すずさん、買い物行こうか!」
「すずさん、みかん買ってきたよ」

僕の家族は誰も果物を好んで食べない。
果物はすずの好物。

「すずちゃん、今日なにが食べたい?」
「すず、こんなに遅くに乾燥機かけるの?送っていくよ」

お母さん、お母さん僕にも優しくしてよ!!!!!

ていうか、僕は彼女を連れてきたはずなのに妹が増えたんじゃないか?

最近はすずも真剣な顔して僕に言ってくる。

「家族になろうよ」
「えっと、それって?」
「うん」

それは…まずい。色々とまずい。
て言うか、まだ早い…?

「すず、僕たちまだ出会って一年ちょいじゃなかった?」

そうだっけ、すずは首をかしげた。

「まだ、はやいよ」
すずは「そうかなぁ」と呟いて、むくれ顔になる。

「まだはやいよ、家の事とか、色々あるしもう少し考えよう。」

僕はそう言ってさらりと交わした。
すずの事は好きだけど、「結婚」というくくりに僕たちの関係を留めてしまうのは、何だか勿体無いような気がした。
のびのび生きているすずに、「」の中に入る事はとても窮屈そうで、軽い気持ちで決断したくなかった。

もしかしたら、僕の我がままでしかないのかも知れないけれど。
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