キミが欲しい、とキスが言う

頭が飽和状態だ。

父のさげすむような眼がいつも私をとらえている。

でも、これまでの生き方を否定されたって、今更どうにもならないじゃない。
否定されればされた分だけ、頑なになるしかない。

私だって、ダニエルと一緒になりたかった。
でも無理だったんだもの。仕方ないじゃない。

今だって、浅黄と一緒にいたかっただけよ。
馬場くんを傷つけたいわけじゃない。

でも、傷つけてでも浅黄を取りたかった。

そんな私に、あなたが好きだなんて言う資格ないじゃない。

何にも分からない。
私には、……何もできない。


「……茜さんっ?」


体中に力が入らず、頭がくらくらしてしゃがみこんだ。怪訝そうだった馬場くんの顔が心配で歪んでいる。

熱いなか帽子もかぶらずに歩き続けてきたし熱中症かも、と気づいたけれど、すでに自分では体を動かせない。
体調を崩したことにも気づかないなんて本当にダメな女だ、私は。

浅黄たちも外で遊んでいたけれど、大丈夫かしら。


「お願い、浅黄を……」


そこで、意識が途切れた。馬場くんの私を呼ぶ声が、ゆっくり遠ざかっていった。



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