キミが欲しい、とキスが言う
*
十分ほど経って戻ってきたのは馬場くん一人だった。
「暑いから中に入れって言ってきた。幸太の家に行くって」
「……そう」
幸太くんの家なら大丈夫かな。ちゃんと水分とってくれたらいいけど……って、倒れた私が言えた義理じゃない。
「めまいとかない? ひどかったら病院連れていくけど」
「平気。冷たくて気持ちいい」
「はい、水分」
差し出されたペットボトルを上半身を起こして飲む。
「……おいしい」
大柄な馬場くんの肩が、がくんと下がる。
大きなため息とともに、吐き出されたのは「……よかった」という言葉。
心配はしてくれたみたいだ。
「何があった?」
彼の問いかけに、私は答えない。何と答えたらいいのか分からないのだ。
本気の彼に対して、打算を含んだプロポーズした。
それが、彼に許されるとは思えなかった。
「だんまりっすか」
「ごめん。さっきの、忘れて」
「簡単に忘れられるようなインパクトじゃなかったんですけど」
馬場くんの口調が敬語に戻っている。拒絶をあらわにされているようで落ち着かない。
「ちょっと焦ってたの。変なこと言ってごめんなさい」
うつむいた私の顎を、彼の大きな手が掴んで上を向かせた。
細い目の奥で、瞳は鋭い光を放っていた。
「俺は惜しいことをしたんですかね」
「惜しいって?」
「好きな人からあんな風に言われて、理性で押し返すのは結構根性いったんですけど」
「私が嫌だから拒絶したんじゃないの?」
「……最初から俺の方が告ったり追いかけたりしてるのに、どうしてそういう発想になるのか俺には分からない」
はあ、とあきれたようなため息をついて、彼は私から手を離す。
十分ほど経って戻ってきたのは馬場くん一人だった。
「暑いから中に入れって言ってきた。幸太の家に行くって」
「……そう」
幸太くんの家なら大丈夫かな。ちゃんと水分とってくれたらいいけど……って、倒れた私が言えた義理じゃない。
「めまいとかない? ひどかったら病院連れていくけど」
「平気。冷たくて気持ちいい」
「はい、水分」
差し出されたペットボトルを上半身を起こして飲む。
「……おいしい」
大柄な馬場くんの肩が、がくんと下がる。
大きなため息とともに、吐き出されたのは「……よかった」という言葉。
心配はしてくれたみたいだ。
「何があった?」
彼の問いかけに、私は答えない。何と答えたらいいのか分からないのだ。
本気の彼に対して、打算を含んだプロポーズした。
それが、彼に許されるとは思えなかった。
「だんまりっすか」
「ごめん。さっきの、忘れて」
「簡単に忘れられるようなインパクトじゃなかったんですけど」
馬場くんの口調が敬語に戻っている。拒絶をあらわにされているようで落ち着かない。
「ちょっと焦ってたの。変なこと言ってごめんなさい」
うつむいた私の顎を、彼の大きな手が掴んで上を向かせた。
細い目の奥で、瞳は鋭い光を放っていた。
「俺は惜しいことをしたんですかね」
「惜しいって?」
「好きな人からあんな風に言われて、理性で押し返すのは結構根性いったんですけど」
「私が嫌だから拒絶したんじゃないの?」
「……最初から俺の方が告ったり追いかけたりしてるのに、どうしてそういう発想になるのか俺には分からない」
はあ、とあきれたようなため息をついて、彼は私から手を離す。