キミが欲しい、とキスが言う
ヤバい。
心臓がバクバクとうるさい。
なんでこう、時々つるっと爆弾みたいな発言をするのよ。
「……物好きだな」
「かも知れませんね」
「わかった。困ったら連絡してきなさい。駆けつけるのは無理だが、金銭面くらいは助けてやれる」
「……それはありがたいですけが、ふたりで頑張ります。一緒に家庭を作り上げていきたいんです」
「そうか」
父は満足そうに彼を見つめると、私に吐き捨てるように言う。
「振られないようにせいぜい頑張れ」
「なっ、失礼ね」
「お前にしちゃ、いい選択のようだ」
「……失礼ね」
今度は声高に反論できなかった。
確かに、馬場くんは今までの人と違う気がする。
先ほどの発言は、私との生活をしっかり見据えてくれているように聞こえた。
でもねお父さん。
私と彼のこの関係は、本物じゃないのよ。
そう思ったら、胸がチクンと痛かった。