キミが欲しい、とキスが言う
「本物って。……僕のお父さんになるってこと?」
「そう。浅黄と茜さんと毎日一緒に暮らしたいと思っている。でも、茜さんは浅黄が一番大事だから、浅黄が嫌だっていうなら、頷いてくれないだろう。だから俺は、浅黄に俺のこと認めてほしい」
大人の、しかもこんなに大きな人に対等に問いかけられるのは、どんな気持ちなんだろう。
浅黄は少し迷ったように視線を動かし、助けを求めるように私を見つめた。
「……お母さんも馬場さんが好きなの?」
問いかけられて、私は答えに窮して、……でも、頷いた。
浅黄がかかわることなのに、子供だからとうやむやに済ますのは間違いだと、教えてくれたのは馬場くんだ。
「馬場くんは、浅黄を信じろって言ってくれたから」
「僕を?」
「そう。お母さんね、ずっと、浅黄に我慢ばっかりさせてるのが苦しかったの。でも、馬場くんは、浅黄は私のために頑張ってるんだから謝るなって言ってくれた。私、浅黄のいいお母さんだって自信、なかったのよ。馬場くんがいてくれなかったら、イギリス行きの時も、今回もちゃんと浅黄を守れたか分からない」
浅黄は私を見つめながら、何やら考えているようだ。
自分の髪をさらりと撫で、馬場くんの方に向き直った。
「馬場さんは、僕の金髪、嫌じゃないの?」
馬場くんは呆れたような顔をした。