キミが欲しい、とキスが言う


「……お前が最初から持ってるものをなんで嫌う必要がある? 俺が知ってる浅黄は、金髪の浅黄以外にいないんだけどな」

「お母さんを好きになる人は、みんな僕の髪が嫌なんだと思ってた」


自分の前髪を引っ張りながら、不思議そうに浅黄が言う。


「なんでだよ。お前の髪、綺麗じゃん」


馬場くんの声が、あまりに普通だったからかしら。

浅黄は自分の髪をくしゃくしゃとかき回した後、ふわっと笑って、お菓子いる?とでも聞かれたときのような気軽さで答えた。


「じゃあ、一緒に暮らしてもいいよ。僕、馬場さんも好きだから」


途端、馬場くんが浅黄を持ち上げる。「わっ」と声を上げて驚いた浅黄は馬場くんの首にしがみついた。

金色の髪と、馬場くんの黒い髪が重なり、おでこがこつんと当たる。まるでふたりだけの暗号みたいに、そろって目を細めた。

その光景に、私は言葉がかけられなかった。
ダニエルとの時より、ふたりの顔が自然に笑っていて、それが嬉しくて胸が詰まったからだ。



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