キミが欲しい、とキスが言う

私なりに考えて出した結論だ。
浅黄のことを思えば、本当はすぐにでもやめようかと思ったけれど、いざ次の仕事をと思うと、なかなか踏み出せない。


「そっか。……でもあいにく、俺的にはそんなに待つ気は無いんだよね」

「え?」


つかつかと近寄ってきた馬場くんは、私の首筋にキスをする。全身に妙な刺激が伝わって鳥肌がたった。驚いて思わず逃げ腰になってしまう。


「なっ……」

「大丈夫。浅黄はしばらく帰ってこないし」


その言動。何をする気だ。


「いや待って。今何時だと思ってる? 太陽サンサンよ?」

「茜がそこを気にするとは思ってなかった」

「気にはしてないけどっ」


追い詰められて、和室の壁にどんとぶつかる。
楽しそうに笑う馬場くんとの距離は、もう五センチもない。


「俺は基本、茜がほかの男に愛想ふりまいてるのは好きじゃないんだよね」


手首を抑えられる。首筋を舐められて、体中に電気が走ったみたい。


「それにこの間浅黄と話しててさ。弟欲しいなとも言ってたし」

「馬場く……」


それってつまり……


「結婚したらすぐ欲しいくらいなんだよね、俺。悪いけど、辞めさせるよ」


脳をとろかすようなキスが落ちる。壁から肩がずり落ち、頭を押さえられながら畳の上に寝かされる。覆いかぶさる彼のキスは、とても甘くて情熱的だ。

いやいや、さっきの一言が不穏だった。流されちゃだめよ。


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