キミが欲しい、とキスが言う
「わあ、ももちゃん、早起き。まだ早いよ。お布団入る?」
イケない場面を見られているというのに、瑞菜は平気な顔で布団に招き入れる。
「うん」
もぞもぞ入り込んでくる子供たちも、瑞菜にぞっこんだ。小さな体を丸めて、ふたりとも競うように彼女の隣を奪い合う。
「せんちゃん、ママの隣」
「やだ。ももだよ」
「おーいパパは空いてるぞ」
「パパじゃやーだ。あ、パパよけてよ」
ひっついていた俺たちの間に入り込み、ふたりは瑞菜の両脇をキープして満足そうだ。
ふたりを片手ずつで平等に抱きしめながら、顔は俺の方に傾ける。
「この間、車借りに来たお店の子。馬場くんだよね。今年は馬場くんの恋が成就するかを賭けようか」
「へ?」
「さっきの続き。まだ進展なしなんでしょ? 私は上手くいく方に賭ける」
「あ、ずりぃ。俺もそっちなのに」
「譲ってよイチくん」
「前回もお前の勝ちじゃん。譲るのはそっちだろ」
強気でそう言ってみたら、差すような視線が三か所から注がれる。
「なんだよ」
「パパぁ、ママお願いだって」
一番小さな千利の八の字眉毛が俺の心をチクチク刺す。いやいや、ここで譲ってなるものか。
「千利、これはな?」