キミが欲しい、とキスが言う

取り残された女三人の表情はそれぞれだ。
江津子さんは笑っていてくれるけど、お義母さんはややふてくされている。そして私はおそらく、戸惑った顔になっているだろう。


「……ったく、あの子は」


お母さんは呆れたようにため息をつくと、「すいませんねぇ。ホントに、言い出したら昔から利かなくて」と気を取り直したように言った。

そんな批評、自分の親からも聞いたなと思いだす。私と幸紀って、実は似た者同士だったりするのかしら。


「で、本人のいないところで言うのもなんだけどね。……ホントにあの子と結婚するつもりなの?」


今更取り繕っても仕方ないと思っているのか、お母さんはざっくばらんに話し始めた。


「はい。……なんかすみません。聞いてますよね、私の仕事のこと」

「ええ。てっきり都会の女に騙されて……なんても思ってたけど、今の感じ見ていると振り回されているのはあなたの方みたいねぇ」


今のやり取りで、そこまで理解してくれたらしい。


「立ち話もなんなので、座りましょうよ。お茶入ってますよ」


という江津子さんに促され、女三人でテーブルを囲んだ。
お茶をすすりながら、お義母さんは私の顔をまじまじと見つめる。


「それにしても綺麗ねぇ。子供も金髪だったし。でも名前はがっちり日本人だよね。ハーフなの?」

「はい。私自身は母がイギリス人のハーフで。浅黄は更にアメリカ人の血が混じっています」

「ややこしいねぇ。それで、前の旦那さんは? 死別? 離婚?」


きわどい質問が多くてどう答えたらいいか迷うけど、今は幸紀もいないから助けてもらえるわけじゃなし、もう開き直るしかないんだろうな。

幸紀だって、そのままでいいって言ってたし。もうそれを信じるしかない。

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