キミが欲しい、とキスが言う

お義兄さんだけはバツの悪いのか、居心地悪そうに地面を蹴ると、舌打ちする。


「これだから水商売の女は。そうやって男たらしこんできたんだろ」と小声で言うのが私の耳にも届いた。


次の瞬間、お義父さんのこぶしがお義兄さんの頭に炸裂した。


「いつまでも愚痴愚痴言ってんじゃねぇよ。子供は親の鏡だ。この子、泥だらけになっても一生懸命だったろう。だからこの人も、職業はどうあれ真面目な人だ。俺はそう思う」


お義兄さんは頬を抑えたまま、私に背中を向けた。


「……分かってるよ、うるせぇ!」


お義父さんの言葉は、素直に嬉しかった。

私と浅黄は顔を見合わせ、そして笑う。前を向いたら、幸紀も私たちを見て笑っていた。
目だけで通じ合う、幸せな時間。

今日、ここに来てよかったと、心の底から思った。



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