キミが欲しい、とキスが言う
一方の彼は平然と入ってきたかと思えば、湯船に溜まったお湯を洗面器ですくって、自分の体を流している。
「茜、座れば」
お風呂用のイスを勧められ、スポンジ片手にボディソープを泡立てる彼。首筋にそれを当てられた瞬間に、全身が飛び跳ねそうになる。
「やっぱり自分で洗うからいい」
スポンジを奪い取ろうとしたけど、「嫌だ。反応面白い」と彼は笑う。
こんな時ばかり、年下らしいやんちゃな顔で。
そのまま、スポンジは背中や腕を伝い、背中から包み込むようにして、今度は胸やお腹を洗われる。スポンジはいつしか床に投げ出され、そのままの彼の手が、ボディソープの泡とともに私の体を行き来する。
「……こんな触られ方したことない」
「俺もこんなことするの初めてだよ」
「子供みたいよ、体洗ってもらうとか」
「子供だなんて思ってないけどね」
シャワーのコックがひねられる。泡を洗い流された私の肌は、熱を持って少し火照っている。そこに、彼の唇が落ちてくる。
「子供に欲情とかしないしね」
「んっ」
「抱きたい、茜。抱いていい?」
そんなの、こっちのセリフだ。
撫でつけられた体は、あなたが欲しくて疼いているというのに。