キミが欲しい、とキスが言う


「お招きありがとうございます」

玄関先で頭を下げる馬場一家。

改めて三人並ぶところを見てみると、馬場だけが浮いている。

艶のある髪をひとまとめにし、ワンピースに身を包んだ茜ちゃんは、さすがホステスと思うくらい華やかな美人で、胸もボーンだし腰はくびれてるしで、ただで見ていいのかって気にさえなってしまう。

その隣に遠慮気味に立つ彼女の息子の浅黄くんは、半袖シャツとチノパンという清潔そうな格好が似あっていて、金髪の上に、幼いながらに端正な顔をしているので一瞬見とれてしまうくらいだ。
こういうのを、纏う空気が違っていうのかもしれない。

この目立つふたりのなかで平然といつものジーンズにTシャツ姿でいられる馬場は神経が太いのだろう。


「わあ、いらっしゃい」


瑞菜は大喜びで迎えに出る。続いてうちの子供たち……保育園児の百花と千利が彼女の後ろからぴょこりと顔を出した。


「嬉しい。待ってたの。入って、こっちこっち」

「こんにちは。お邪魔します」


茜ちゃんと浅黄くんはチビたちにも笑いかけると、瑞菜が通した席へと座る。

「これ、お土産です」とケーキの箱を差し出され、瑞菜からはさらに歓声があがった。
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