キミが欲しい、とキスが言う
「うーん。残念ながらないから、千利のブロックで作ったらどうだ?」
適当に返せば、「うん!」と思いっきり本気にして百花が走り出す。
「ももちゃん、まってぇ」
その後ろを千利が追いかけて行った。
単純だな、面白い。
俺は別に子供好きじゃなかったはずなんだが、我が子というのはなんでこんなに可愛いんだろう。
「仲道さん、手伝いますよ」
馬場がいつの間にか腕まくりをしてキッチンに立っている。
「いいよ。お前今日客だし」
「女同士の会話に、俺邪魔みたいだし」
確かに、リビングでは茜ちゃんと瑞菜が歓談していて、浅黄くんはいつの間にか百花と千利のブロックづくりに混ざっている。
「じゃあ手伝ってもらうかな」
今日のメニューは子供は唐揚げ、大人はそれに甘酢を和える。ポテトフライに枝豆の天ぷら。豆腐とひじきのサラダに、ほうれん草の胡麻和えだ。
「悪いな、お子様メニューが多くて」
「子供いたらこんな感じになるんっすね」
「まあなぁ。あいつら嫌いなものだと食わねぇし」
ちらりと子供たちに目をやる。
ももが一生懸命浅黄くんに話しかけている。浅黄くんはにぎやかな茜ちゃんとはイメージが違い、穏やかな物腰でももの話を聞いている。
そのわきで、千利が頬を膨らませている。いつも一緒の姉を取られたようで嫌なんだろう。