キミが欲しい、とキスが言う
瑞菜の大きな笑い声に視線をテーブルに移す。女同士はそれなりに気が合うのか盛り上がっているようだ。
それにしても、瑞菜の方が年上のはずだが、パッと見は逆だ。
俺は瑞菜が好きだけど、好きとは別のところで男には、いい女に対する興味があるのは自然のことで……。
「……茜ちゃんって胸でかいよな」
たわわに揺れる胸から視線が離せず、思わずぼそりと呟くと、「そっすね」とあっさりと馬場が答える。
「いいなぁ、お前。毎日あれ揉んでんのか」
思わず呟いたら、馬場は自分の手をお椀型にしてまじまじと見て考えている。
なんか、リアルでよけいエロいな。
「……持ちきれないっすね」
まじか。その手でももてあますって一体何カップなんだ。
思わずごくりと生唾を飲み込む。
「いいな、馬場、男の夢だなぁ」
「まあそうなんですけど。仲道さん、その辺にしておいたほうがいいっすよ」
「え?」
「イーチーくん」
凄みの効いた、瑞菜の声。
一気に青ざめた俺は体を硬直させる。茜ちゃんと話していたはずなのに、いつの間に来た。
「どうせ私はペチャパイですよ」
「そんなこと言ってないだろ」
「言ってますー。イチくんのエッチ!」
背中を強くどつかれて、思わず目から火花が出る。
小さいくせになんでこう力は強いんだ。
瑞菜は冷蔵庫から飲み物を取り出すと、ブリブリ文句を言いながらテーブルへと戻る。
馬場はにやにや笑いながら、味をつけた鶏肉に衣をつけて揚げ始めた。
「馬場さんの奥さんは、ホント面白いですよね」
「そうか?」
「子供らも可愛いし。俺、仲道さんちみたいなの結構理想です」
……たまに可愛いこと言いやがるな。
ほだされたのか急に優しい気持ちになって、「幸せになれよ」と俺は思わず呟いた。