キミが欲しい、とキスが言う

瑞菜が二人を泣き止ませている間、俺にできることと言えば、キッチン周りを片づけておくくらいだろう。
全部片付け終えて、寝室を覗きにいくと、瑞菜が人差し指を立てて口元にあてた。ちょうどふたりとも眠ったところだという。


「風呂、入れられなかったな」

「うん。まあ仕方ない。ここから目が覚められても困るじゃない、明日でいいよ。イチくん先に入っていいよ」

「うん。でもふたりとも寝たんなら久しぶりに一緒に……」


入らないか、と告げる前に「ヤダ」とつれない返答がくる。


「なんでだよ」

「どうせペチャパイだもん。見られたくありませーんだ」


あ、こいつ、根にもってやがる。


「誰も瑞菜の胸が小さいなんて言ってないだろ。ただ、あれだけの巨乳が目の前にいたらつい見ちゃうじゃないか」

「そうだよね。イチくんはおっぱい星人だもんね。高校のときだってさー」

「黒歴史を持ち出すなよ!」


寝室を出て浴室に向かいながら止まらない言い合いに、終止符を打つべく、俺は後ろから瑞菜を抱きしめる。


「イチく……」

「巨乳が好みなのに、瑞菜を選んだんだぞ。その意味を考えろよ」


黙る瑞菜。よしよし、もうひと押し。


「瑞菜を愛してるからだろ」


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