キミが欲しい、とキスが言う
*
それから、二週間ほどが過ぎた。
その間も【U TA GE】からは時々お店の残り物が届けられたけれど、私はメールでのお礼に留めて、店に行くのは避けていた。
そんなある日、珍しい人が店に顔を出す。
絡み酒になっていたお客様を見送って、ようやくカウンターに戻った時だ。
「アカネ、ちょっと」
ママに呼ばれて奥に入ると、所在無げにたたずむさわやかな顔の青年がいた。【U TA GE】の若き従業員、光流くんだ。
「光流くん、どうしたの?」
「残り物持ってきたんですけど。……いろいろありまして、もしよかったらお時間いただけないかと」
「え、でも」
仕事中だし、とママを見るとふわりと笑われる。
「いいよ。今あんたのお客帰ったばかりだし。ご指名入ったら呼ぶから裏方仕事してなさい」
「……ありがとう、ママ」
うちのママは理解があるから助かるけれど、仕事中に邪魔されるのは困る。
軽くにらみつけると、光流くんは降参とでもいうように両手を上げた。
「怒る気持ちはわかります。お仕事中邪魔して申し訳ないです」
「分かっているなら何? 話があるなら仕事終わりまで待てないの?」
「正攻法だと逃げられるのかなぁと思って」
逃げるってなんで?
意味が分からず小首をかしげると、光流くんも不思議そうな顔をする。
「……怒っているわけではないんですか?」
「え?」
それから、二週間ほどが過ぎた。
その間も【U TA GE】からは時々お店の残り物が届けられたけれど、私はメールでのお礼に留めて、店に行くのは避けていた。
そんなある日、珍しい人が店に顔を出す。
絡み酒になっていたお客様を見送って、ようやくカウンターに戻った時だ。
「アカネ、ちょっと」
ママに呼ばれて奥に入ると、所在無げにたたずむさわやかな顔の青年がいた。【U TA GE】の若き従業員、光流くんだ。
「光流くん、どうしたの?」
「残り物持ってきたんですけど。……いろいろありまして、もしよかったらお時間いただけないかと」
「え、でも」
仕事中だし、とママを見るとふわりと笑われる。
「いいよ。今あんたのお客帰ったばかりだし。ご指名入ったら呼ぶから裏方仕事してなさい」
「……ありがとう、ママ」
うちのママは理解があるから助かるけれど、仕事中に邪魔されるのは困る。
軽くにらみつけると、光流くんは降参とでもいうように両手を上げた。
「怒る気持ちはわかります。お仕事中邪魔して申し訳ないです」
「分かっているなら何? 話があるなら仕事終わりまで待てないの?」
「正攻法だと逃げられるのかなぁと思って」
逃げるってなんで?
意味が分からず小首をかしげると、光流くんも不思議そうな顔をする。
「……怒っているわけではないんですか?」
「え?」