キミが欲しい、とキスが言う

「それ脅しじゃないの」

「そうですね。まあでも、そう言ってこいと言われたので」


本当に……馬場くんって何を考えてるの?
言葉は足りないし、変なタイミングで行動的になるし、本当に訳が分からない。
でも文句を光流くんに言ったところでどうにもならないしな。


「わかったわよ、また店に行く。で、直接馬場くんに文句言うから」

「はい。それは存分にどうぞ。……あと、茜さん、最近周囲で変わったことありません?」

「変わったこと? いいえ?」

「そうですか。ならいいんです」


意味が分からないんだけど、とりあえず光流くんは納得したようだ。


「お時間いただいた代わりに手伝いますよ」


と、締めの汁物の配膳を一手に引き受けてくれる。

男が持って行っても喜ばれないでしょうから、とカウンターより外には出ないものの、瞬時に店の中を見渡して運ぶ順番を指示するあたりはさすがだ。

「あの子、動きはいいわねぇ」とママに言われ、「影のオーナーみたいなところあるからね」と返しておく。

実際、光流くんがいなかったら、【U TA GE】はあそこまでの繁盛店にはなっていないだろう。




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