キミが欲しい、とキスが言う
困ったように頭をかく姿は、新鮮で可愛く見える。でかいけど年下、とはこういう感じか。
鼻を抑えながらあたりを見回すと、他の人たちはプラネタリウムを出て、星に関する展示物を見ていた。
私は正直、原理とか仕組みといったことには興味がないので、「ちょっと落ち着きましょうよ」と馬場くんを引っ張るようにして、展示コーナーとは別の休憩スペースを陣取った。
「女慣れしてないの? 馬場くん」
「なんすか、その上からの態度」
「だって。なんか可愛いもの。そんな顔もするのね」
ようやく自分のペースに持ってこれて、ちょっと嬉しかったのもある。
ついつい、からかうような態度で接してしまった。
馬場くんは眉間の皺を深くして、「男にかわいいとか言うの、どうかと思いますよ」と唇を尖らせる。
「それに別に今までずっとぼっちとかいうわけじゃないですよ。ここ数年、好きな相手ができなかっただけです」
「じゃあフリーだったんだ」
「……当たり前じゃないですか」
怪訝な顔で言われてしまった。
確かに、好きな相手と付き合うのが一番正しくていいことなのは知っているけど。
だからと言って、数年フリーのままでいるという潔さは、私は持っていない。
ちょっとでも頼れる部分があるなら、割り切った付き合いをしてしまうだろう。
女にだって性欲はあるのだ。体を慰めてほしい時だってある。
実際、私は橙次にそれを望んだ。最終的に本気で好きになったとしても、最初は慰めてほしいだけだった。
そう考えると、私と馬場くんは合わないだろう。
個人的には、よほど合わない人じゃなければ、別に付き合うのは構わないのだ。馬場くんだって対象外ではない。ただ、結婚までと考えてくれるなら逆に気軽に付き合えないっていうだけで。