キミが欲しい、とキスが言う
喉の奥が熱くて、絞り出した声がかすれる。
不覚にも、これは嬉しい。
浅黄の金髪は私にとっては癒しであり苦い思い出の象徴でもある。それを好きだと言ってくれる人が多ければ多いほど、私の中の気持ちも、好感の度合いが大きくなるような気がする。
「……おばちゃん、どうかした?」
「ううん。そうね。馬場くんいい人ね」
「そうだよ。ねぇ、馬場ちゃんって浅黄の父ちゃんになるの?」
「……どうして?」
突拍子もない質問に、今度は言葉が出なくなる。
でも、幸太くんは無邪気に笑って私を見上げてくる。
「だって、おばちゃんと仲いいじゃん。浅黄、父ちゃんいなくて寂しいって前に言ってたし。馬場ちゃんが父ちゃんになればいいじゃん!」
まっすぐな瞳が、私にはチクチクと痛い。
少し考えて、私は無難な答えを絞り出した。
「そんなに簡単にいかないのよ。だって、浅黄のパパなら、金髪じゃなきゃおかしいでしょ」
「そうかな。……そうかぁ」
なぜか幸太くんがしょぼんとうつむいてしまって、私までなんとなく気分がへこんでくる。
ゆっくり恋を育てようとしたって、周りはそうは見てくれない。
この年になって恋愛しようと思うのは、やっぱり難しいものなのかもしれない。