キミが欲しい、とキスが言う
*
食事を終え、座卓で宿題を始めた浅黄を馬場くんが隣から覗き込んでいる。私は、お茶を入れ、片付けをするために立ち上がった。
「あなたたちが作ってくれたから、片付けは私がするわね」
「すいません」
「こっちこそ、ごちそうさま」
自然に交わされる会話が、なんだか気恥ずかしい。洗い物をしながら、自然に口ずさむ鼻歌。どうやら私は今、ちょっと浮かれているようだ。
やがて、浅黄は宿題を終えたらしい。
「僕、お風呂入るね」
いつも、祖父母の家で食事後すぐにお風呂に入るので、浅黄は当然のように立ち上がる。
「お湯はってあげようか?」
「いい。シャワーだけにする」
「そう? ちょっと待ってて、タオル出すから」
私が浅黄に構っているうちに、馬場くんはいつの間にか残りの茶碗を洗ってくれていた。
「ごめんね。ありがとう」
「適当に茶碗も棚に戻しましたよ」
「うん」
さっきまでは浅黄がいたから気にしていなかったけれど、部屋にふたりなんだなと思ったらドギマギしてくる。
なんでこんなに落ち着かないのよ。中学生の恋愛じゃあるまいし。
馬場くんは気を取り直したように頭を下げた。
「そろそろ帰ります。押しかけてすいません」
「いいえ。ご飯おいしかったわ。ありがとう」
新聞で包んでおいた包丁を持って、馬場くんが玄関先に向かう。サンダルをはいたところで、思い出したように振り返った。
「あ、茜さん、ケータイ番号教えてくれません?」
「いいけど。……なんで?」
別に隣なら、いつでも連絡が取れると思うんだけど。
食事を終え、座卓で宿題を始めた浅黄を馬場くんが隣から覗き込んでいる。私は、お茶を入れ、片付けをするために立ち上がった。
「あなたたちが作ってくれたから、片付けは私がするわね」
「すいません」
「こっちこそ、ごちそうさま」
自然に交わされる会話が、なんだか気恥ずかしい。洗い物をしながら、自然に口ずさむ鼻歌。どうやら私は今、ちょっと浮かれているようだ。
やがて、浅黄は宿題を終えたらしい。
「僕、お風呂入るね」
いつも、祖父母の家で食事後すぐにお風呂に入るので、浅黄は当然のように立ち上がる。
「お湯はってあげようか?」
「いい。シャワーだけにする」
「そう? ちょっと待ってて、タオル出すから」
私が浅黄に構っているうちに、馬場くんはいつの間にか残りの茶碗を洗ってくれていた。
「ごめんね。ありがとう」
「適当に茶碗も棚に戻しましたよ」
「うん」
さっきまでは浅黄がいたから気にしていなかったけれど、部屋にふたりなんだなと思ったらドギマギしてくる。
なんでこんなに落ち着かないのよ。中学生の恋愛じゃあるまいし。
馬場くんは気を取り直したように頭を下げた。
「そろそろ帰ります。押しかけてすいません」
「いいえ。ご飯おいしかったわ。ありがとう」
新聞で包んでおいた包丁を持って、馬場くんが玄関先に向かう。サンダルをはいたところで、思い出したように振り返った。
「あ、茜さん、ケータイ番号教えてくれません?」
「いいけど。……なんで?」
別に隣なら、いつでも連絡が取れると思うんだけど。