キミが欲しい、とキスが言う
ところでさ、とママが続ける。
「浅黄ちゃん、どう?」
「どうって?」
「仕事のこと、なんか言ってる?」
ママに問いかけられて、言葉に詰まる。
浅黄は、今年八歳になる私の息子だ。金色の髪を持った、天使みたいに可愛い子。だけど気弱で、美しい容姿は彼にとって引け目以外の何ものでもない。
昔から、人と違うことを指摘され続けたせいか、すっかりビクビクした子どもになってしまった。
私の仕事のことは、隠していても親伝いでバレていく。浅黄本人は何も分かっていないだろうけど、周りから色々吹き込まれると戸惑うだろう。
別に私は体を売ってるわけでもなんでもないのに、水商売というだけで周りはそういうイメージを持っている。
「なにも言ってはこないけど。なにか思っていたとしてもあの子は言わないかも」
「大丈夫かい?」
「ダメでも、働かなきゃ生きていけないじゃない?」
行き当たりばったりに生きてしまった私に、他の選択肢はない。
今更、近所のお弁当屋さんでパートしたって無理だろう。
一度ついてしまったイメージは消せないし、大体それでは金銭的に生活が成り立たない。
それに、別にいまの仕事が嫌だとも思っていなかった。
人と話すのは好きだし、顔にもボディラインにも自信がある。
頭が悪い私が秀でているところを存分に使える仕事だと思っているからここにいるのだ。
ただ最近は、業界の方から弾かれそうだな、と感じている。
年配のホステスは、いいお客と関係を持って妻の座に収まるか、自分で店を持って経営に入るか。どちらにもなれない私は、いずれは用済みと言われてしまうのだろう。