キミが欲しい、とキスが言う
柄にもなくジワリと目に涙が浮かんで、それを隠すようにうつむいた。
「……どうやったらそんな風になれるんだろ」
「なに?」
「ううん。何でもない」
鼻を一度すすって、自然に目尻をぬぐう。潤んだ瞳には気づかれたかもしれないけど、美咲ちゃんは突っ込んではこなかった。
そこで注文したアイスコーヒーが届けられ、私たちは一瞬沈黙する。
「……私、馬場くんが好きなのかな」
「さあ。結構ハマっているようにお見受けしますが」
「だったらどうやったら上手くいくのかしら。たくさん恋愛してきたけど、私、長続きしたことなんて一度もない」
気恥ずかしさから喉ばかりが乾く。アイスコーヒーもあっさり底が見えてきた。
「弱気発言の原因はそれ? 長続きしないのが怖いの?」
「本気になってから振られるのはもう勘弁だわ」
そんなダメージに耐えられる気がしないから、最初っから手に入らない方がいい。
「意外。茜ちゃんはもっといつも自信満々だと思ってた」
私も、そうありたかったけれどね。
自信は年齢と反比例してなくなっていくばかり。
褒められてきた美しさは衰え、気が付けば隠してきたダメなところばかりが残っている。
「でもね、手を伸ばさなきゃ恋なんて手に入らないのよ」
「……そうね」